家族のライフサイクル

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第5期(1973~1977年)においては,居住地区に関する研究として「都市の社会地区分析から発展した因子生態学によって都市内部の居住地区の分類が行われた後には,そのような居住地区がどのようにして形成されるのかを扱った研究が生じ,家族のライフサイクルと関係づけた説明がなされた。
社会的地位に応じた居住地区は郊外にもモザイク状に発達し,個々の居住地区の住民の価値観とライフスタイルが一様になり,その同一性を守ろうとする住民の態度が郊外のモザイク化を一層進展させた」ことからも明らかなように,居住地区に関する研究の深化が指摘されている。
また,社会地理に分類された研究のなかにローズ(Rose;1976)による「郊外への黒人住宅地の進出」と,新しく出現したラディカル地理学の枠組みのなかで,ハーヴェイ(Harvey;1973)による都市の住宅市場研究が紹介されている。
わが国の地理学においてハウジングを対象とした研究は,木内(1940)による「都市密集住宅地区の地理学的研究序論-特に東京市に於ける分布に就いて-」が最も早い段階のものと思われ,その中では劣悪な住宅事情の地域の分布について考察されている。不良住宅地区などへの住宅状況に関する研究は都市問題への関心の高まりとも関連して研究の蓄積がなされ,例えば稲見 (1955,1957)は戦災都市における住宅の罹災と復興についての分析など住宅を指標として都市構造を明らかにした。木内(1979)は居住に関する地理学的アプローチについて,「居住地理学あるいは集落地理学として発達をみたが,都市の住居地域についての文献は必ずしも十分ではない」と指摘した。
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木内はこの理由として,形質的な諸要素(環境・土地・住宅(街)・個々の家屋)と機能的,生活の諸要素(国民社会・地方・地区・個々の住民)とによって作り出される住居に対して,後者は人口学や社会学において多くの研究があるものの,形質面と総合した住居地域(広い意味のコミュニティ)としての論文に乏しかったことにあると述べ,地理学においてこの観点からのアプローチがあまり活発に行われなかったことを指摘している。

ハウジング研究の明確な定義はない

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わが国の地理学的研究において,管見の限りハウジングについて明確に定義した文献はないが,木内(1979)は「居住地理学」の用語を用いることによってハウジング研究を表しており,また菅野(1982)は,アメリカ合衆国における都市地理学の動向を時期別に展望したなかで,その研究動向において,ハウジング研究,都市内住居移動研究,都市内部のスラム,貧困などの研究や行動科学的研究への多様な展開が指摘されている。
この菅野によるアメリカ合衆国の都市地理学の展望のなかで,ハウジングに関連した研究の展開に絞ってみると,彼の時期区分による第3期(1963~1967)以降においてかかる内容の研究が活発になっている。第3期は,アメリカ合衆国における社会地理学の出現の時期とされ,「合衆国における社会地理学はドイツの社会地理学とは違い,社会集団の相互作用過程とその空間的パターンを重要視し,その研究対象は人種・民族集団,貧困などの社会問題に向けられた」。その理由のひとつとして,菅野は1960年代に激化した公民権運動をあげた。
具体的な研究事例としては,社会科学的都市地理学研究があげられ,モリル(Morrill;1965)による都市内部におけるゲットーの問題やトンプソン(Thompson;1964)による都市内部における貧困に関する問題などの社会問題に対する研究対象の広がりが指摘されているが,菅野はこれらの都市内の住宅問題にかかわる研究をハウジング研究とは認識していない。
しかしながら,菅野は第4期(1968~1972年)に分類した時期の特徴として,「都市社会地理の研究が多くなり,都市交通と都市内人口流動研究,さらに居住(housing)研究も増加した」と述べていることからもわかるように,ハウジング研究は都市社会地理的研究の一研究分野として位置づけられた。
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都市社会地理学的研究として「マイノリティ研究,とくに黒人社会と文化の研究が進んだ」とし,ハウジング研究の明確な定義はないが,ハウジング研究に該当するとしている「都市内の居住地域の研究」は,因子生態研究と呼ばれる「都市内の住民の特性に基づく地域区分に因子分析(あるいは主成分分析)を用いた研究」とされる。

地理学的焦点は大都市地域内のハウジングに

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ボーンは,地理学的焦点が都市地域やとくに大都市地域内のハウジングにあることを指摘し,この焦点が「住居の土地利用,近隣変化,世帯の住居移動,土地転換や局地的レベルでの開発のプロセスに関する文献にまとめることが要求されるとしている。
以上のことをまとめてボーンは,ハウジングに関する文献における混乱の2つの主要な源(すなわち,概念化と測定)があることを指摘し,「最も基本的レベルにおいて,ハウジングは確かに『シェルター』ではあるが,それ以上のもの」であるとし,「物理的存在,社会的人工物,経済的商品,資本ストック,ステータス・シンボルであると同時に,政治的に扱いにくい問題(hot-potato)でもある。われわれがハウジングに言及する時,この多次元的なものの側面に関して意味していることにわれわれは正確でなければならない」と述べた。
次に,著書名や論文タイトルにおいてhousingの用語を使用している文献から,ボーン(1981)はハウジングに関する少なくとも6つの共通した定義を明らかにしている。それらは物理的施設単位あるいは構造(aphysicalfacili.tyunitorstructure),経済的財あるいは商品(aneconomicgoodorcom.modity),社会的あるいは集合的財(asocialorcollectivegood),サービスの集合(apackageorbundlesofservice),経済部門(asectoroftheecon.omy)であり,同時にこれらの総体でもある,と定義した。さらに,ポーンは「それぞれの概念がハウジングの個々の観点にも適応でき,またそれぞれの概念は特定目的に関連している」と述べている。
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また,ショート(Short;1982)によるイギリスにおけるハウジング研究は,住宅政策,住宅の生産と消費における開発主体と世帯間の相互作用,住宅と世帯間の関係の3つの側面から分析しており,同様にドワイヤー(1984),ドワイヤー(Dwyer;1986)が第三世界の都市における住宅問題を研究するなかで用いた,ハウジングの用語は住宅市場というよりはそれにかかわる住宅問題 や居住状況,スラムなどを住宅政策や計画などとの関連から分析し,都市政治との密接なつながりからアプローチしたものである。
とくにイギリスにおいては,地理学関連学術誌にはハウジングを対象とした論文が数多く掲載されており,それらの内容は,住宅供給などの住宅市場に関連したもの(Kirby;1976,Williams;1976)や民間住宅,公営住宅あるいは住宅協会の住宅供給に関した都市の住宅政策を扱ったもの(Gray;1976,Pinch;1978,Kirby;1981)など,ハウジング研究とは住居そのものの研究というよりも住居供給に関連した事象や住宅政策に関する制度論的研究など,住居や居住に関連した幅広い対象をもった研究であるといえる。

ハウジングの定義を整理

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従来の地理学的研究の文献からハウジングの定義を整理すると以下のようになる。ボーン(Bourne;1981)はハウジングについて,「単純でかつ複雑な用語」であるとし,単純な用語としては物理的人工物や可視的な日常生活内の中心構成要素とみなされるが,一方で「より広義の社会的コンテキストにおいては,ハウジングは計り知れないほど多様で複雑であって,その社会経済的,政治的,近隣環境に密接に相互に関係する」ものとしている。ポーンはハウジングに関して次のような6つの主要テーマを強調している。
すなわち,
①さまざまな近隣や都市,国々における限りない多様性や複雑性,さらにひとつの政治システムから他の政治システムヘー般化することの困難性,
②住宅の需給関係に影響を与える因子における地理学的変化性(変異性),
③ハウジングが公共部門(セクター)と民間部門の両方において世帯に配分されるプロセス,
④この配置から結果づけられる社会的・空間的結果,
⑤これらの結果から生じた問題や政策的反応,
⑥住宅政策と都市構造や公共政策の次元間の関係,である。
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さらに,モローージョンズ(Morrow-Jones;1989b)もサブ人口(女性と高齢者)と住宅供給に関する報告のなかで,居住地移動,所有の変化,世帯のライフサイクルを結合させたハウジング研究の必要性を主張しているが,そのなかでハウジングとは「人々が居住する方法や建造物環境の質など多くに分化しているため,複雑なトピック」であり,あらゆるスケールでの空間的分析が必要とされると述べている。

ハウジング研究の位置づけ

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学問領域に関してみると,経済学においては,「住宅および住環境に関する国民のニーズおよび潜在ニーズを適格に予見して,住宅および住環境改善の投資を安定的に成長させていくことは,国民生活の福祉と生活の質の改善の道であると同時に経済の安定成長の道であり,福祉と経済的要請の両方をみたす道ということができる」(五井・丸尾,1984)との指摘にあるように,ハウジング研究は国民の生活福祉の向上と経済成長への政策と密接に関連した存在として位置づけられる。
このような観点から,ミュース(1971)は,『都市住宅の経済学』(CitiesandHousing)において,住宅の需給や住宅立地を住宅支出や住宅産出などの経済学からハウジングに関して理論的な分析を行った。また社会学においてハウジングは,インナーシティや郊外住宅地における住宅問題を扱うというより,それぞれの住宅地域における住民特性やコミュニティの構成,あるいはそれらの変容過程の分析など,住宅を通してみた地域構造の変容に関心が集中している(小林ほか編;1987など)。
一方,社会学の一分野で1970年代以降構造主義的マルクス主義者カステルを理論的旗手としてヨーロッパの都市研究で台頭してきた新都市社会学におい ては,ハウジングに対して単に住宅の需給だけではなく,社会階層ごとの居住条件への欲求や歴史的特異性などを含めた構造的解明を試みている。
この点に関して,吉原・岩崎編著(1986)は新都市社会学の論文の特徴について「論調が,広義のマルクス主義を基調としながらも影響源が極めて多様であること,またそのこととかかわって国家論,階級論における新たなく知〉の形態と交錯しながら,現代都市の複雑多岐にわたる問題領域をカバーしようとしている」と述べている。このため新都市社会学において扱われるハウジング研究は,都市の資源配分としての住宅政策や居住者特性を含めた都市空間の変容過程としての社会文化的説明の文脈の中にみいだすことができる(町村,1986)。
この点においては,近年の社会地理学に非常に近い立場である。この他にフランスの社会学においては,ローヴェ(1973)が家庭像や親子関係,男女の新しい役割,隣人関係などと結び付けた住宅観について,私的社会空間としての住宅を都市の公的空間として研究する視点を主張し,住宅社会学を創設する必要性を訴えた。
しかしながら,わが国の『地理学辞典』には項目として取り扱われておらず,都市地理学の項目内にも,住宅研究すら言及がない。地理学におけるhous・ingの意味は,rDictionaryofHumanGeography3rd・ed.』(1994)によると,この項目の分担者であるスミス(Smith)はハウジングの定義を「住まい(shelter),避難所(refuge),福祉サービス(welfareservice),投資(investment),仕事やサービス,社会的援助のゲートウェイ(gateway)」であるとしている。また『DictionaryofHumanGeography2nd・ed.』(1986)によると,分担者のマクドウェル(McDowell)はハウジングを「異質で耐久性のある固定された本質的消費財(heterogeneous,longlasting,immobileandessentialconsumergood)として把握し,ハウジングが「その居住地によって隣接地の財やサービスへの近接性が決定されるような,消費者間の社会的ステータスと所得格差の指標である」とした。
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このよ うな階級間格差は,「それはPOWER(権力)と開発者の利益,CLASS(階層)と消費者の階級集団の競合の源である」とみなされ,また,「住宅投資は総合的な国家財政政策の重要な要素でもあり,多くの先進国の福祉供給の主要部分でもある。競合する社会理論の範囲は,この複雑なシステムの個々の部分を分析するために,地理学者によって利用されている」と記載されている。